お祝いのイベントや特別な記念日などに贈られることが多い胡蝶蘭。
大輪の花と上品な花びらの質感、そして美しい白やピンクなどの色合いがとてもエレガントで、飾っておくとその場が華やぎます。
胡蝶蘭は鉢植えの状態で贈られるのが一般的ですが、もらった胡蝶蘭をそのまま放置しておくと、水が足りなくなって枯れてしまったり、逆に湿気にやられて腐ってしまったりします。
胡蝶蘭はとても高価なお花なので、折角もらったものをダメにしてしまうのはとても勿体ないことです。是非正しい手入れ方法や育て方を知って、長く美しくキープしましょう。
素人が胡蝶蘭をゼロから育てるのは難しい
胡蝶蘭のお手入れ方法の前に、育て方の基礎について少しだけ解説いたします。
突然ですが、胡蝶蘭って高いですよね?
とても高価なイメージがあると思います。
だからこそ、ここぞ!というシーンで贈り物に選ばれる高級感があるのですが、一体なぜそんなに高い値段がつくのでしょうか。
その答えは、ゼロから育てるのが非常に難しく、また手間と時間がかかるからなのです。
種を蒔いて水やりをして太陽の光に当てておけば自然と芽が出て成長する…という単純なものではなく、素人が種子から育てるのは至難の業と言われています。
[種子からフラスコで培養してから数年かけて苗を育てて出荷される]
胡蝶蘭は、まず種子の状態でフラスコで約1年もかけて培養されます。
お花を育てるのにフラスコが必要というのは驚きですが、その上約1年もフラスコで種子の培養をおこなわなければならないというのは気の遠くなるような話です。
培養して苗になった胡蝶蘭はフラスコから取り出して寄せ植えをして、そこから更に2年から2年半ほどの月日をかけて丁寧に育てられ、やっと出荷されます。
つまり、全くのゼロから育てるとなると、3年以上の月日を費やさなければならないということになるのです。
胡蝶蘭の値段が高くなるのも納得できますね。
胡蝶蘭の特徴を知って上手に育てよう
さて、胡蝶蘭を育てる難しさを知ったところで、いよいよお手入れ方法と、既に成長している胡蝶蘭を更に育てていく方法をお教えします。
手間暇かけて育てられる胡蝶蘭、さぞ手入れも面倒だろう…と思われるかもしれませんが、お手入れに関してはそれほど面倒でも大変でもありません。
ポイントを押さえていれば、長く美しくお花を保つことができるので、是非実践してみてください。
[胡蝶蘭が好む環境]
植物を育てるためには、もともとその植物がどのような環境で育つのかということを知る必要があります。
胡蝶蘭は熱帯のジャングルに生えている高い木に着生して生育する植物です。
「着生」とは、土に根を張らずに、木の上や岩盤などに根を張ることで、すなわち胡蝶蘭は地面から直接ニュッと生えてくるわけではなく、木の上に生える植物なのです。
そのため、胡蝶蘭は風通しの良い環境を好みます。また熱帯の植物ですので寒いのは苦手です。
[胡蝶蘭の置き場所]
胡蝶蘭を置く場所として理想的なのは「リビングのレースカーテンの傍」です。
日当たりが良く、しかし直射日光が当たらず、ジメジメしておらず、人が生活している部屋であるため温度が適温(20~25度程度)であることが多いためです。
胡蝶蘭を置く場所の条件を整理してみましょう。
「リビングのレースカーテン」に当てはまらなくても、この条件がクリアできていればOKです。
・日当たり良好
・直射日光が当たらない
・風通しが良い
・エアコンなどの風が直接当たらない
・果物の近くには置かない
最後の「果物の近く」ですが、果物によってはエチレンガスという成分を出しているものがあり、それが花を萎れさせてしまいます。
なお、胡蝶蘭に最適な温度は、夜は18度前後、昼は25度前後です。
理想はいつも20度前後と言われているのですが、私たち人間の適温よりも少し低めなので、無理のない範囲で調整するようにしましょう。熱帯の植物ですので30度ぐらいまでは耐えることができます。
[胡蝶蘭の水やり]
お花を育てていると、水やりは毎日しなければならないと思ってしまう方が多いのですが、植物によって最適な水やりの頻度や量は異なります。
胡蝶蘭は、水をやりすぎないことがポイントとなります。
鉢植えの表面の水苔を指で押して完全に乾いたら水やりの合図となります。見た目が乾いていても、指で押した時にジワッと水気が出てきたらまだ水やりはしません。
周期の目安は、季節や環境にもよりますが1週間~10日に1回です。
胡蝶蘭1株につき、コップ1杯程度の常温の水を注ぎます。
この時、受け皿に水が出てしまったら余分な水は捨てましょう。そのままにしておくと根腐れの原因となります。
気を付けたい点としては、水やりは午前中にやることです。
午後にやってしまうと日当たりが悪い時間帯で水気がなかなか抜けずに、これまた根腐れの原因となってしまいます。
[胡蝶蘭の肥料]
胡蝶蘭を育てる上で肥料は必要なのでしょうか。
答えは、買ってから(もらってから)1~2年は不要で、水からの栄養だけで十分です。
3年目以降も元気な花を咲かせるために、肥料を与えるのがベストですが、これも与えすぎには注意が必要です。
胡蝶蘭の肥料は、洋ランの肥料と同じものです。
園芸ショップなどで洋ランの肥料を探せばすぐに見つかります。
肥料によって与え方や与える量が異なりますので、説明をよく読み、胡蝶蘭についての記載が無い場合はプロに確認するなど工夫して、上手に肥料を与えましょう。
[胡蝶蘭の病気]
植物を育てる上で気になるのが病気や害虫の被害です。
胡蝶蘭は屋外よりも室内で育てて観賞するのに適した植物なので害虫の心配はほとんどいらないのですが、病気については知っておいた方が良いでしょう。
病気というと、細菌感染などをイメージしますが、ここでは日焼けや根腐れなども「病気」としてご紹介いたします。
・葉落ち(病気ではありません!)
まず、病気と勘違いされがちな「葉落ち」についても解説します。
「葉落ち」は生理現象で、葉が黄色く変色して枯れていく現象です。ただの老化のようなもので、他の葉や花そのものには何の影響もありませんので、枯れた葉を取り除いてお手入れしましょう。
・日焼け(葉焼け)
強い日差しに当たると、その部分が白っぽく変色します。日焼けしてしまった部分は組織が破壊されているため元には戻りません。この症状を発見したら一刻も早く日陰に移しましょう。
・渇水症状
分かりやすく言うと「水分不足」で、胡蝶蘭の脱水症状のようなものです。
葉にシワが出て、いかにも干からびそうな様子になります。早急に水やりをしましょう。
水やりをしても改善しない場合は根腐れを疑います。
・根腐れ
水のやりすぎにより、根が腐ってしまう病気です。
根が腐る原因は細菌感染ですので、根腐れを起こした部分を切除する必要があります。
・軟腐病
最近による感染症です。患部がブヨブヨになることと、独特の臭いが出ることが特徴です。
患部を切除する必要があります。
・褐斑細菌病
葉の部分に小さな黒点ができて、そこから腐敗していく病気です。
患部を切除して広がらないようにするのが大切です。
・灰色カビ病(ボトリチス菌)
胡蝶蘭の花弁に褐色や黒色の斑点が浮き出るようになります。
軽度の場合は軽いシミ程度で済み、広がることもありませんが、重度になると株ごと処分する必要があります。
他にも様々な最近やカビ、害虫(ダニ、ノミ等)などによる被害のリスクがあります。
[胡蝶蘭の花が終わったら]
胡蝶蘭の花が終わったら、次の開花のために準備をするのが大切です。
茎の節目を下から数えて2節目の上の部分で切りましょう。
胡蝶蘭は長い歳月をかけて成長する植物です。そのため、その寿命も長く、上手に育てれば50年も花を咲かせ続けると言われています。
美しく長持ちさせるコツは、本記事で解説したポイントを押さえて、適切な環境で育てることです。特に水やりについては「やりすぎない」ということを忘れずに、毎回しっかりと水苔が乾いているか確認しておこなうようにしましょう。
一度花を咲かせたらおしまい、というのは勿体なさすぎる胡蝶蘭、是非長く楽しめるよう丁寧にお手入れしてみてください。